Richard Bruton T.D., Minister for Jobs, Enterprise and Innovation, Ireland
ブルートン・アイルランド雇用・産業・技術相が回復基調にある国内経済の現状や日本との経済関係について話して、質問に答えた。
司会 日本記者クラブ企画委員 軽部謙介(時事通信)
通訳 宇尾真理子(サイマル・インターナショナル)
日本記者クラブのページ
http://www.jnpc.or.jp/activities/news/report/2013/07/r00026044/
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記者による会見リポート(日本記者クラブ会報2013年8月号に掲載)
経済再建 軌道に乗せた自信と信念
かの国の首都、ダブリンを取材で訪ねたことがある。2011年の晩秋、欧州債務危機に見舞われた後である。南欧の重債務国がデモで揺れていたのに、この街はとても落ち着いていた。
銀行が危機に陥り、膨大な財政資金を使って穴埋めしたので、しまいには政府が傾いた。イソップ物語に出てくるアリたちのように、この国の人たちは黙々と働き、経済と財政の立て直しに取り組んできた。
来日したブルートン氏が語ったのも、至って真面目な経済の話だった。公務員の人件費を15~20%切り詰め、人員も10%削減した。銀行の再建のためには640億ユーロの税金を投入した、等々。
640億ユーロといえば、円に換算して8・3兆円。人口500万人に満たない国の納税者の肩にズシリと重い。債務危機前に4%だった失業率は13%となったが、産業競争力を高め輸出を増やすことで、経済再建を軌道に乗せたという。
欧州連合(EU)とユーロ圏の「ゲートウエー(玄関)」として、世界中の企業を呼び寄せ、研究開発や先端技術の拠点として生き残る。そんな経済戦略を国民が共有しているからこそ、財政危機下でも法人税の税率は欧州で最低の12・5%に据え置いた。
緊縮策には国民の反発も強かった。11年の総選挙では、それまで合わせて86議席あった連立与党3党のうち、2党の議席は0に。残り1党も19議席に激減した。それでも、経済改革を進める以外に道はない、との合意は崩れなかったという。
艱難辛苦の末に政府が市場で債券を発行することが可能になり、国際通貨基金(IMF)による管理体制にも終止符が打たれようとしている。雇用の創出など課題は多いが、針路は誤っていないという自信がブルートン氏の表情からうかがわれた。
しからば、日本の財政立て直しは? ふと胸に手を当ててしまった。
日本経済新聞編集委員
滝田 洋一
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